投資事初め

(11) シニアの投資戦略

今まで、過去の投資経験や当時の雰囲気をお話ししてきた。 そろそろ、これからの投資戦略について書いていきたいと思う。 最近はYoutubeなどの広がりにより、だいぶ一般の人にも投資の王道みたいなのが認知されているように思う。 例えば、つみたてNISAでS&P500を地道に積み立てるとかだ。 確かに、これに勝るリスクとリターンのバランスをもった投資方法は他にはあまり見当たらない。 だが、これは退職金をもらって引退したようなシニア層にも当てはまるのだろうか? 10年、15年の長期視点では間違い無いのかもしれないが、60近いシニア層はその10年、15年のロスは若い人の何倍も大きい。 そのことを踏まえて書いてみたいと思う。

 現在最強と呼ばれている米国株も今後どうなるかは誰にもわからない。 特に数年後という単位で言えば、上昇しないという可能性も低く無い。 若い世代であれば、それをじっと10年以上ホールドしておけば、過去の実績からは、いつか必ず上昇してきたので、そんなイレギュラーな数年は回避できる。 しかし、会社を辞めてこれから、やりたかったことをやっていこうという時期に、せっかく何十年も会社に勤めたご褒美とも言える退職金がいきなり半額になることは、その後上昇すると分かっていても耐えられるものでは無い。 では、投資などしないで貯金をするのがベストかと言われても、私はそれも納得のいく答えでは無いと思っている。 ではどうすれば良いのだろうか。 

 まず原則として、10年以内にやってみたかったことと、最低限の生活費は投資せずに現金で持っておきたいので、仮に株価が7割下げたとしても、それらが達成できるような金額を投資に回せば良いのでは無いかと思う。 最低限の生活費は年金がもらえるというタイミングまでで十分だ。 そうやって、残りのお金を投資に回すのが最も無理のない方法と考えている。 では、その残ったお金でなぜ投資に回した方が良いのだろうか? それは投資と書くとなにかギャンブルにお金を突っ込むような感じがするが、いいかえればどういう形で資産を持っておくかということに他ならない。 仮に1千万円相当のプレゼントを頂いたとして、それを現金でも株でも置き換えられるとしたら、何に置き換えるのだろうかということを考えてみてほしい。 現金、つまり日本円に置き換える人は、日本円に100%賭けたということに他ならない。 今後日本でハイパーインフレが起きて、国家破綻し、日本円が紙屑同然になってせっかくの1千万円でもテレビ一台買えないときが来ないとも限らない。 実際、外国ではそういうことが起こるのも珍しいことでは無い。 もちろん、確率は低いがゼロでは無い。 そこまで極端でなくても、国が目指している毎年2%のインフレ目標が達成されると、1千万円の貯金は2%の福利で価値が減少していくことになる。 もう一度言うが、これは国が目指している未来だ。 国家破産とは訳が違うストーリーなのだ。 1千万円を全部米ドルに買えて外貨預金で持つと言う方法は、一見円高になったらどうしようとか、危なっかしいように見えるのだが、冷静に考えてみればアメリカという国の基軸通貨に100%賭けているだけで、日本円で貯金することと大きな違いはない。 むしろ、日本よりもアメリカの方が財政破綻する可能性が低いとすると、よりリスクの小さな投資戦略ということになる。 現在のように全世界的なインフレ懸念の高い時期では、エネルギーや金などの貴金属も悪くはない。 もちろん、全世界の経済界が望んでいる、企業活動の向上つまり、株に賭けるのも当然のことだ。 そう、現金をホールドすることもリスクがあることを認識すれば、自分の余裕資産をリスク分散、すなわち投資に振り分けることはごく自然なことだと思うがいかがだろうか? もちろん、株だけとか、貴金属だけとか偏った投資戦略は現金ホールドと同様の問題で、リスクが大きいことは認識すべきだ。だが、最小限のリスクに分散する方法は理論的にわかっている。 そんな投資ならばやってみる価値があるのではないだろうか? それはチャレンジではなく、守りだと思うのだが。

 資本主義というのは、持っている人が投資をしてリターンを得る仕組みのことである。 そして、世界の経済界は企業業績が伸びることを望み、そうなるように全力で努力している。 つまり、株に投資するという行為は、世界のより多くの人が望んでいる流れに乗ることど同義語だ。 政府が価値を減らすことを目標としている現金というものに全てをかけるのは流れに逆らっているようなものだ。 もちろん、今後もデフレが続けば正解かもしれない。 でもその確率は決して大きくないと思うがいかがだろう? 今後はより具体的にどうすれば良いか少しづつ書いてみたいと思う。