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電気の街秋葉原

 最近、ギター熱が復活し周辺の機材に関心が高まって、電子部品を秋葉原で調達し始めました。 秋葉原とは実は古くからの付き合いで、小学生のころから秋葉原で電子部品を漁っていたのでした。 当時はBCLと呼ばれる、海外放送を聞いて放送局のカードを集めることをしながら、アマチュア無線の免許をとって無線を始めました。 そのころ、八王子から電車に乗って、秋葉原によくトランジスタやコンデンサーや抵抗などを買いに行っていました。 当時の秋葉原は、今のように誰もが楽しめる場所ではなく、電気のプロフェッショナルが集まる男の街でした。 電気屋は腐る程あったのですが、食べるところはほとんどなく、駅デパートに入っているお好み焼き屋かラーメン屋くらいしかなかったくらいです。ただ、その頃からずっと続いている小さな電気部品を売っているお店は今でも残っています。先日買った部品屋のおじいいさんがいたのですが、私が小学生の頃よく使っていたお店なので、当時もきっと彼から部品を買っていたことでしょう。 100円そこそこのトランジスタを買いながら、心の中で、「45年ぶりにここで買いました」とつぶやきました。

 こういう小さいお店には所狭しと色々な電子部品が置いてあるのですが、そのお店がだんだん少なくなっているのは皆さんも想像できると思います。 今日お話ししたいのはそうではなくて、そこに置いてある部品に「完売」というラベルが貼られていることです。 これは「品切れ」ではないのです。 「完売」というのは今後も入ってこないということです。小さな抵抗部品は5Ωから1MΩくらいまでいろんな種類が置いてあるのですが、その中で、10kΩは「完売」とかそういうラベルが貼られていたりするのです。 つまり、もう作るところもなければ、仕入れる予定もないということです。 こういう部品が世の中から無くなってきているのかどうかはよくわかりませんが、少なくとも小売業として成立しなくなってきているということだと思うのです。 たかが、一個40円あまりの小さな抵抗の何種類もあるほんの数種類が「完売」になっているのが、なんだか妙に物悲しく思えたのでした。 

 日本が先進国として躍進できたのはこういった電子産業が支えたことは間違い無いと思います。 屋台のような秋葉原の小さなお店のおやじも、回路図を見せると、頭の中で瞬時に計算して、適切な部品を選んでくれることも珍しくありません。 大きなメーカーの技術者ならともかく、小さな電気部品を売っている販売員ですら、電子工学の基礎が理解されているということです。 こういった、底辺を支える人たちのレベルの高さが日本の経済を支えてきたのです。 ほんの小さな部品の「完売」が、日本経済の「完売」と重なって見えるのは、言い過ぎでしょうか? 物悲しさはこんなところから来ているのかもしれません。