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電動キックボード

 今日の日経に電動キックボードがファミマ600店で乗り降りが可能になるとの記事が載っていました。 このパーソナルモビリティはフランスやアメリカなどで、主に都市部では市民の足の一つとして根付いているようです。 東京でも渋谷を中心に少しづつその姿を見かけるようになりました。 さて、東京でも移動手段の一つとして根付いていくのでしょうか? 昔、モビリティ関係の仕事をしていたので、ちょっと気になって書いてみました。

 東京での根付いているパーソナルモビリティの代表はドコモでやっているシェアサイクルでなないでしょうか。 一時期は都心で走っている自転車の半分が赤いこのシェアサイクルに見えたほどよく走っていました。 その原因の大半はUber Eatsの配送員が使っていたこともあったのですが、今でも着実に台数を伸ばしているようです。

https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/sharecycle/pdf02/05.pdfより引用

 こうしたパーソナルモビリティは都市部では天候の影響の除けば、非常に有効な移動手段ということは実証されてきたのだと思います。 そういうことからも、キックボードがある程度、台数を伸ばしていくと考えるのは自然です。 ただし、こういったものが街に溢れるとそれなりに課題も増えてきて、キックボードで言えばやはり接触事故なんかが大きな問題となるようです。 フランスではすでに問題視されていて、去年の年末から最高速度を10km/h 制限されることになりました。 おそらく、東京でもキックボードの台数が増えるほど、そういった問題が増えてくるのは間違い無いですが、新たな交通手段には事故は付き物です。 そこは、制度や運転意識の向上などで対処していくことになるでしょう。 で、わたしがお話ししたいのはそのことではなくて、やはり不動産に関係することを少しお話しします。

 こういったシェアリングサービスがなぜ、都市部で流行るのかといえば、人口が多く、短距離のトリップ数が多いことが挙げられますが、実はそれだけではありません。 もう一つの大きな理由が土地活用という視点です。 そもそも、都市の交通手段は実は昔からシェアリングがほとんどだということは意外と気づかない点です。 電車、バス、タクシーどれも、自分の持ち物では無いですよね。 使いたい時にみんなと共有して使うものです。 では、なぜ地方ではマイカーが有効な手段になるかといえば、「車を置く場所に困らない」からに他なりません。 東京でマイカーを使うとすると、渋滞という問題もありますが、なんと言っても駐車場所、駐車料金といった問題が大きな問題となります。 これらはすべて、土地単価の高さに起因する問題です。 そう、都市部は地価が高く、移動しない時間つまり駐車する時間の長いマイカーは不利だということが分かります。 だから、お金に余裕のある人は都市部でもマイカーを活用するのです。 

 さて、キックボードに話を戻すと、都市部で受け入れられる可能性が高いのは、置く場所の面積が小さいことです。 先の述べたコンビニの空きスペースで置けるということが大きいと思います。 コンビニ視点で言えば、駐車場と店舗のデッドスペースがお金を生むことになり、利用者視点で言えば、あちらこちらにあるコンビニに乗り捨てできるメリットを享受できることになります。 そして、シェアリングだからこそ、そのスペースは一人一台よりも小さく済むので、効率が高くなるのです。 これがシェアリングにおける土地活用の効果です。 おそらく、マンションなどの集合住宅にも付帯設備として普及していくことでしょう。 ただし、この土地活用が鍵ではあるのですが、アキレス腱にもなります。 
 放置車両の問題です。 台数が増えて、街にキックボードが溢れてくると、文字通り溢れたキックボードが駐輪場をはみ出して、デッドスペースではなく、有益なスペースを浸食し始めます。 フランスではセーヌ川に投げ捨てられたキックボードがいっぱいあるそうです。 ここをうまくマネージメントすることがわたしは鍵だと思っています。 

 ここまで聞いて、キックボード事業に参入しようと考えた方もいるかもしれません。 その方はぜひ覚悟してほしいのが、モビリティサービスは ”超レッドオーシャン” だということです。 新しい乗り物だから “ブルーオーシャン” のような気がしますが、”移動”という人間の基本本能に基づく業界で、そんな簡単に穴があるわけがないのです。 徒歩から飛行機まで、あらゆる移動距離と地域環境に即したモビリティが考えられ、そして生き残ってきたのが今の形です。 台数が増えるかもしれませんが、つねに価格競争に晒される厳しいい業界ということを覚悟してください。 おすすめは、ベンチャーで立ち上げて、レバレッジをふんだんにかけて、一気に台数を増やして、事業売却するというストリーかかな?? でも、わたしはやろうとは思いませんけど。 だって、「歩く」ほうが環境負荷が低くて、スペースも最小限、料金も不要で、健康にいいじゃないですか。 20km/hくらいのキックボードなら、徒歩と既存交通機関で十分カバーできると思うのですが、皆さんはどう思います?