投資事初め

(2) 20年前の投資マインド

 2000年頃だろうか、きっかけは覚えていないが、ある一冊の本を見て、今まで知らない世界を見たような気がした。 「海外投資を楽しむ会」と呼ばれる団体が出版している ゴミ投資家シリーズの一連の本がそれだ。 さっきネットで調べてみたら、まだ活動しているようだ。 最初に買った本は確か ビックバン入門というタイトルだったと思うが、もちろんKーPopのことではない。 当時、金融ビックバンとニュースや新聞でいろいろと話題になっていたのだが、そもそも金融ビッグバンとは何か全くわかっていなかったので、手に取ってみたのだと思う。 ただ、内容は金融ビッグバンの解説本というよりも、今まで常識とされてきた、ライフプランをとことん合理性を持って見直して、新しいライフプランを構築するものに近いと思う。 書かれていることは、今みてみると、どれもびっくりするようなことだが、読んでみると至極当然のことが書いてあり、本当に著者の慧眼には脱帽するほかなかった。 この内容を説明する前に、当時のその「今まので常識」を書いておこうと思う。 ちなみに、この本に書かれていることは、今のちょっと意識の高い人なら常識的なことなので、目新しいことは何もない、念のため。

 さて、20年前に時を戻して、当時どんなふうに自分のライフプラン、ファイナンスプランを考えていたかということだが、これは、もうひとことで言うと、会社任せということに尽きる。 大学を卒業して、会社に入社したら、会社の用意してくれた福利厚生を総務のお薦めするままに、続けるという非常にシンプルなもの。 少し気の利いた人ならば、定期預金とか、少し利回りのいい貯蓄をしてたりしていたが、普通の人はその会社おすすめのプランで余ったお金はほとんど使ってしまっていたと思う。 今で言うFIREを目指して節約するなんて概念は少なくとも私の周りには1人もいなかった。 この会社でおススメ、というのが曲者で、それは会社に出入りしている、保険営業員も含まれる。なぜか、どうやって許可をもらうのかわからないが、お昼休みになると、そういったミニスカートをはいた綺麗所の保険営業のお姉様が会社に入り込んできて、勧誘を進めるのである。 怪我をしたらどうするとか、結婚に向けての準備だとか、生命保険だとか、たいして考えもせずにホイホイ申し込んでしまう。 まぁ、それが普通だったのだ。 

 保険のことは別にして、会社の用意した財形プランとかは、今思えばそんなに悪いものではなかったと思う。 前述の持株会然り、またもう一つの社員専用の貯蓄プランは市場金利よりも高い金利で貯金することができた。 90年代は確か、6%くらいはあったのではないだろうか、今考えると、元本保証で6%の運用とは気が狂いそうなほど美味しい金融商品だったが、当時の私は複利のパワーなど知る由もなく、少し貯まった都度、車やバイクと消えていった。 ただ、そのことに関してはあまり後悔はしていない。 仮に1億円の蓄財が今あったとしても、あの時の車やバイクで得た友人や経験は何モノにも変え難いものだからだ。 

 いずれにせよ、会社がお薦めした、ごくごく標準的なことをやっていれば、定年までしっかり勤め上げれば、そこそこの退職金と年金で余裕で生きていけると信じていた時代だったのだ。 中には株式投資とかをやっていた人もいたが、ほぼギャンブラーか変質者くらいの異端児扱いだったのだ。 ましてやバブルがはじけて、財テク(当時そう呼ばれた)に走ったものは愚か者の象徴だった。 私は父親が証券会社に勤めていたこともあって、株に対しては人よりもアレルギーはないが、それでも、株をやって運用しようなんて思っていなかった。 流石に紙の株券はなかったと思うが、今みたいに、クリック一つで注文するのが一般的でなく、証券会社の窓口に行って、注文を出すようなのがまだまだ一般的な時代だ。 感覚的には今で言えば、よく電話のかかってくる、ワンルームマンションの営業に乗るような感じと思ってもらえれば良い。 そんな時代背景だったのである。 次回はその ゴミ投資家ってどんなことを言っていたのかを書いてみたいと思う。

写真:D ThoryによるPixabayからの画像