会社からは程なくして、正式な案内があり、この早期退職プログラムを決断する前に、転職エージェントに相談することができるということを聞いた。 これは退職後に次の就職先を見つけるためのサービスで、2社のうちから1社を選ぶことができるのだそうだ。 どちらにも相談に行って良いとのことだったので、早速行ってみることにした。
このサービスは普通の転職エージェントと何が違うかといえば、転職先を紹介してくれることにはなんら変わりはない。 ただ、斡旋会社から見た時のクライアントが違うということだ。 一般の転職エージェントは採用する会社がその費用を持つ。 今回の場合は転出元の会社がその費用を持つということだ。 それで何か大きく変わるとは思わなかったのだが、一つ違和感を覚えたことがあった。
今回色々聞いてみたかったのは、転職先を探すと言うよりも、自分という労働者が市場でどのような価値があるかを知りたかったのだ。 エージェントが言うには、今の仕事と同業種以外もシニアが活躍できる場合は思っているよりもあるとのこと。 豊富な社会経験が物を言うのだそうだ。 ただ、どの話も報酬に関して、威勢のいい話はしてくれない。 基本的に、全ての話は給与が大幅にダウンすることが前提だ。 もちろん、これは想定内の話だが、それに決めてかかる姿勢というのが、引っかかるのだ。 自分がと言うわけではないが、中にはまだまだバリバリに活躍できるだけのスペシャリティを持った人もいるだろうし、ひょっとすると年収アップを望める人もいるかもしれない。 それはその人がどういう能力を持っているかなど、もう少し深くインタビューしなければわからないはずだ。 であるのに、そのストーリーは初めから全く考慮されている気配がない。 試しに、この斡旋会社の持つ、ハイクラス転職のサービスも併用してくれないかと聞いたら、はっきりとそれはできないと言われたのだった。 もっと、気になったのはクライアントとの取り決めでできないことになっていると言われたことだ。 それ以上のことは聞かなかったが、会社としてはより条件の良いところへ転職することを望まないのだろうか、疑念だけが残った。
試しに、自分で勝手にそういうハイクラス転職エージェントにWebから申し込んでみたら、実現性があるかどうかは別にして、何件かは紹介してもらえたし、面接を申し込んだら、ちゃんと受けてもらえたし、2次面接まで行ったところもあった。 自分としては、結果断られることを知ることによって、自分の置かれている立ち位置を確認したかったのだが、結局それは自分でやってみるしかなかったのだ。
自分の市場価値はよくわからなかったが、会社がこの早期退職制度をどう捉えているかはなんとなくわかった気がした。