闘病記(骨盤&肘骨折)

(11) 男の尊厳

2022年2月15日 火曜日 入院15日目

 今日は昨日採ったレントゲンとCTの説明を医師から受けた。 右肘にはワイヤーが生えた大きな釘が2本骨に突き刺さっていたのだよくわかる。 ほぼどこが折れたかわからないくらい、きちんと密着しているのがわかる。 肩甲骨にはすでに2本のボルトが入っているが、これで体内4本目。 どんどんサーボーグ化されていくが、一つも能力はアップしていない。 これだけあると、そろそろ、空港での金属チェックで引っかかるかもしれないと思ったりした。 バリーシーンという昔のGPライダーは体内に金属がありすぎで、飛行機乗るときはいつもレントゲン写真を持っていたと言う話を聞いたことがあって、レーサーに憧れていたこともあって、当時はかっこいいなと思ったりしたが、現実はゴメンである。 骨盤の骨折はレントゲンで見てもよくわからない。 CTで撮った画像を元に3D化した画像でやっとわかる。 クラックは大腿骨の受けから内部に縦に入っていて、奥まったところにある。 クラック自体は1本なので、複雑ではない。 こちらも順調とのことだが、立った時の荷重をモロに受ける部分なので、慎重にやっていきたいとのこと。 とはいえ、早くこの入院生活から脱出したいので、そこを先生に打診してみたが、明確な回答はなかった。ただし、こちらが早く退院したがっている意志は伝わったと思う。 Iさんやら、Tさんみたいにできるだけ、病院にいたいと思っている人もいるので、ちゃんと意思表示はしておいた方が良いと思った。 以前肩の骨折で入院した時に思ったが、病院はなかなか入院させてくれないが、入院するとなかなか退院させてくれない。 これって、不思議に思っていたのだが、よく考えると賃貸住宅と一緒で、入居者の属性はきちんと見分けるけれど、一旦入ってもらったら、できる限り長く住んでもらいたいと思うようなもの。 ベッドをアパートの一室と考えれば、納得できた。 

 今日のリハビリはものすごい進展があった。 午前中に先生に伝えたプレッシャーがすぐに反応し、ベッド上のリハビリから、地下のリハビリルームへ車椅子で向かう形に変更された。 その際に車椅子も自力で動かす練習をしながらやったので、以降は病院内は自力で移動できることになる。

 車椅子のコントロールは上手だと褒められる。 車輪の乗り物は得意なんで、とプチ自慢をカマスと、そうじゃないかと思ったとお兄さんはいうのだった。 自動車、バイクに乗っている人が車椅子に乗ると、後方確認や交差点での左右確認をちゃんとするからすぐわかるのだそうだ。 そうそう、シートベルトとウィンカーを出したくなったのはいうまでもない。 

リハビリ室につくとまず肘のリハビリから始まった。 単純に曲げ伸ばしをするだけなのだが、これがきつい。 肘の裏側は皮膚がたるんでいるが、そこが手術で縫合されているため、余裕がない。 ここの皮膚が伸びないと、肘を曲げるときに突っかかるのだ。角度にして7、80度が限界である。 これを少しづつ伸ばしていくそうだ。 肘に荷重がかかるのはいけるような気がするが、この屈曲は意外と辛い。 次に足に体重をかけることを試みる。 医師の指示では1/3まではかけて良いとのことだったが、どうやってそれを測るのかといえば、体重計を2つ用意して、片足それぞれを体重計に載せる。その値を見ながら徐々に1/3体重を乗せていくのだ。 体重を測ると約60kgくらいだったので、20kgが目標となる。最初はこの荷重でも怖い。 ちょっとづつ乗せていくと、20kgはそんなに大変ではないことがわかった。 次に両サイドのバーを手で支えながら、左足中心で歩く練習をする。 右足を前に出したまま、左足を少しづつ移動していくようにするのだが、これも最初は怖い。 ちょっとづつ、やってみるとだんだんできるようになった。 たった2mも満たない歩行場で、往復しただけで緊張でくたくたになる。 歩くって大変だなぁと実感する。 今日のリハビリはここで終了。 でもとてつもない大きな進歩だ。 頭ではわかっていたが、人間にとって移動の重要性をあらためて認識した。 退院してからは松葉杖が前提となるが、松葉杖の貸出の話になった時に、実は持ってます、というとすごく驚かれた。 去年足の指を骨折したときに買わなくて良いものを買ったのだった。 倉庫の上の方に掘り込んでおいたが、まさかこんなに早く役に立つことがあるとは思わなかった。 リハビリが終わった後、1人でトイレに行ってみた。 1週間ぶりの立ち小便ができた。 男の尊厳が20%回復した。

写真:biuro_epicureによるPixabayからの画像